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小説

去年、小説を書いてみたのですが、賛否否否否両論。
怒らんといてください。見たい人だけに・・・友人・知人には、ほとんど読んでもらいましたが。


「消失点」


今日は昨日の打合せの答を出す日だ
ベースをくずす- いいよ!楽しい
これだ!と思ってもクライアントとやりとるうちに、変わりつつもなにかいい感じになるときがある
しかしこう思いつつも旅を忘れてはいなかった
いつも小前田は夢の中で旅していた
昨日の小前田の夢はイタチと泳ぐ風景だった
水がとても美しく、水草もとても美しく・・・時はカワタレの刻、美しい光が差し込み始めた頃、使い込まれたシルバーのキーを差し込む
何回か気難しそうに唸り、乾いた音とともに古いクライスラーは目覚めた
この2、3日小前田(コマエダ)はよく眠れず、何か悶々とした時間を送っていた
目的もなくギアをローに入れ、まだ暖まりきっていない駆動系も気にせず、リアをスライドさせながら走る-----気がつくと人気のないオフィス街を両サイドのビルに排気音を反射させながら・・・
「そうか、今日は日曜日か?」
小前田は独り言をでっかい声でつぶやいた!
小前田はデザイン関係の仕事をしていたが、最近は世の中の流れと自身の仕事のスタンスにギャップを感じていた
小前田は酒を呑むと歯に歯をきせぬ言い方になり、周りからは「スナイパー」と恐れられていたが、周辺住民からは少し気のふれたやさ男と思われていた
「あーあ、何がロハスだよ!」
と思いながらクルージングしていると、置き看板が見えた
[café 時間よ止まれ]
こんな場所に、おまけにオフィス街にこんなところあったけと小前田はブレーキを踏んだ
その店はうすぐらい階段をおりたつきあたりにあった
小前田は「ピンポーン」と自分で言ってドアを開けた
カウンターだけの和風喫一番鯛のうす造りと昆布茶を頼んだ
「朝はこれにかぎる。何がアメリカンブレックファーストじゃ!」
と、普段ホテルの朝食にげんなりしていた小前田であった。
しばらく沈黙が続いた後、
「あー、さっきの車の音、あなたの?」
藤白はニヤリとしながら言った
「あーそうだす」
とわざと小前田は細腕繁盛記風に答えた。
「あれはビンテージクライスラーの音だね!」
「むむ・・・」
こうゆうやりとりが4、5時間続いた後、ふたりはジョギングに出かけた
人気のないオフィス街でふたりはキャッキャと、時には鬼ごっこ風に走った

「今日もトワイライトタイムか」
一日をふりかえり、小前田はピルスナーのグラスをかたむける
「ジョッキていやだなー、品がないよ!」茶だ
中には眼光のするどい山男風の男がひとり
「いらっしゃーい。私は藤白(フジシロ)です」
何か日本人の和の心をくすぐる男だ
メニューを見て小前田は開口
しかし小前田は40後半の年齢にさしかかり、自分の老眼力にいやけがさしていた。
先日も
「おーきれいなシャツ、これは買いだよ!」
と思い、レジに差出しビックリ
一桁違うよ!
もうメガネが手放せない
お腹まわりも気になり、ワンサイズ大きなジーンズを買ったがやはり大きすぎた。
リアポケットが革張りの高価なバージョンだ
「えーい、乾燥機だ」とほりこんだ
しかし縮んだのはポッケだけでえらいことに
ジジイの口みたいに縮んだのだ!
「もうたくさんだ!」と思って小前田は藤白に電話をした
今日会ったばかりなのに電話番号を聞くなんて・・・
「どうかしましたか?」
と藤白はシャキッと言った
いいな、この受け答え、まるでキャベツの酢漬けみたいだ
「一杯どうですか?」
「あはは、明日もホームランですね!」
トークのジャムセッションは続く
時にはブルース風に、時にはジャズ風に・・・

時は丑三つ時
「じゃーネ」と電話を切り、明日の仕事に備える

♪タンタララッタンタン
ピアノで始まる「サムバディ・ローン・ミー・ア・ダイム」の音で目が覚める
オリジナルはフェントン・ロビンソンの曲だが、小前田はボズ・スキャッグスのファーストアルバムに入っているこの曲が好きだ
月曜日の朝ということもあって、猫の黒木と軽く柔道ごっこで遊んでみる。
背負い投げは嫌みたいだ


今日も遠くの山々が美しい
しかし小前田はこの美しさの裏には哀しみがあることをよく知っていた
「ものをつくりだすってそんなことなんだよ」
「プロポーションて何?」
あーあ、自問自問
誰も答は出してくれない
朝から打合せだ
今日は近距離なのでウェルビー号で行く
荷台を外したスペシャルバージョンだ
それも重運搬車だ
100キロまでつめる
しかし荷台はない
軽くカウンターステアをあてながらコーナーを抜け、上り坂の頂上ではジャンプだ
ミラーグラスの奥で小前田の眼は光る
「ドライブしてる」
散歩中のシベリアンハスキーもびっくりだ
打合せも佳境に入りふと小前田は思った
「僕はシンプルなデザインが好きだ」・・・・
今回は住宅設計の打合せ
一時はストイックな空間を追求した
しかし一滴の滴がほしいと、「あー余白」
しかし何かが違うぞ・・・コンピューターの動く歩道に乗り遅れたのか・・・
すっかり暗くなった・・・
小雨の高速をスティーリー・ダンの『キッド・シャールメイン』を聴きながらエアダクトから入る水を気にしつつAAR CUDAを走らせる!
「歌詞がつまらないよ最近!つまってしまえ!」

「小前田さん、今日はシックスパックキャブ全開ですね」
と藤白ははにかみながら言った
小前田はビールをドラッグレースなみに呑んだ
今日は藤白のcaféで痛飲だ
隣には役者の想八がいる
「あてもなく旅に出よう」想八が言う
「うん、行く」
小前田は夕焼けの国道を走る
日本海側を思い出した
Don’t look back
しかし小前田は駅前で空っぽのままいつも停まっているカニ道苦のバスが気になっていた
あれで旅に出たい、きっと運転手の表田(ひょうだ)さんもこのままどこかに行きたいと思っているに違いない
2、3日後、小前田は駅前でそのバスのタイヤをノックしてみた
「あ、いつも見てますよね!」と表田
「すみません、つい・・・」
「わかりますよ!どこか行きたいですよね。いつもこうやって空のバスをバックミラーで見ながら頭の中で旅しているんですよ!もうほとんど行きました」
「それはよかった」
安心した小前田は家まで全力で走ったり、止まったりして帰った
 (挿入曲:サンタナ アルバム「キャラバンサライ」より 
song of the windと all the love of the universe)


そう美しいと想い、1人グラスを傾けすぎる小前田
ふと最近大貫妙子が言い放った言葉が頭をよぎる
最近の歌詞は愛だのなんだのと軽く表現しすぎる!
まったくだ
デザインも単に表層的なかっこよさが多いよ
なにか群青色がほしい
たまに反対のことがしたい
バッティングセンターでキャッチャーをしたいと思った
ズバーン!!
「何を考えふけってるんですか?」と藤白はカウンターの斜め前から語った
「いや、やはり旅なんだ」と小前田は一言、二言
「僕は旅田旅男になりたい」とまた言った
「最近、勝負してますか」今度は後から藤白は言う
「いや、小さいころの戦争将棋以来していないよ」
その日はくやしくて帰路についた
なにか、いたたまれなくなり駅の階段をうさぎとびで上がった
何かクリエイティブな感じがした
明日は森に向かって走ろうと思いたち、先日古本屋で見つけて浪花千栄子の本を読みながら、涙した

エンジンオイルゲージをチェックした小前田はウエスで軽く汚れをふきとり、FRPのボンネットをしめ、ピンを挿す
そして後にまわり・・・「バックシャンだ」と1人笑う
「イスもバックシャンだよ」
エンジンはビックブロックではない340エンジンだ
しかしOHVでも高回転型だ
ETCを通り抜けアクセルを踏む
コーナーを2速で加速していき、本線を全開で合流
3速にいれるところで、ツインバレル×3の残りの2ケが開き、ビューティフルノイズが流れる
この車に音楽はいらない・・・けどときたま聴きたくなるよ

クライスラーの音は美しい
足回りの固められたCUDAはワインディングロードを駆け抜ける
樹々も深くなり、木の葉の間からまぶしい光がときおり差し込む
しばらくすると唐突にCUDAを止め小前田はアリゲーターテイルのブーツ裏に枯葉の音をかみ締めながら、森の中に入っていった

歩きながら中学時代の自分を思い出した
すごく影響を受けやすい多感な時期であった
小林桂樹が脳腫瘍になるドラマを毎回みるうちに、自分も脳腫瘍になったと思い、本気で友達に相談していた
いまでこそ180センチはある小前田であったが、その当時は150センチ弱で、手足だけは今と同じくらい大きく、足は27.5センチもあり、よく同級生からは「末端肥大症」とからかわれ教室の四隅にいつもおしつけられました
4、5人に、それも・・・

    第1章終わり

明日第2章はじめます。
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by smilycuda | 2008-08-13 10:32 | 日常
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